今回も前回に引き続き土地の評価方法についてみていきたいと思います。
今回は特定の条件下で評価が低くなるような土地の評価になります。
目次
Toggle借地権が設定されている場合
その土地借地権が設定されている土地の相続税評価では、土地の所有者(地主)と借地権者の権利を考慮した評価方法が用いられます。通常、借地権が設定されている土地の価値は、更地価格から借地権の価値を控除した金額で評価されます。
そして、借地権の価値は、土地全体の価値(自用地評価額)に、借地権割合を乗じて計算します。
借地権の評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合
借地権割合は、地域ごとに国税庁が公表する路線価図に基づいて設定されています(例:60%、70%など)。
ケース例
- 土地の評価額(自用地評価額):1億円
- 借地権割合:60%
- 借地権が設定されている土地を所有していた場合
(1) 借地権の評価額
1億円 × 60% = 6,000万円
(2) 借地権が設定されている土地の評価額
1億円 × (1 – 60%) = 4,000万円
この評価方法により、借地権者の持つ利用権と地主の所有権のバランスが相続税評価に反映されます。
貸家建付地の場合
貸家建付地とは、土地に賃貸用の建物が建っている状態の土地のことを指します。この不動産の特徴は、土地の価値が建物の存在によって影響を受けることにあります。
具体的には、賃貸住宅やアパートなどが建っている土地で、その建物が稼得している賃貸収入が土地の評価に反映されます。通常、更地と比較して、貸家建付地は収益性があるため、土地の価格が高く評価される傾向があります。
貸家建付地の適用条件は下記の2点になります。
・貸家が実際に賃貸されていることが条件。
・空き家状態では「貸家建付地」として評価されない。
貸家建付地の評価額は下記のように計算されます。
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
- 自用地評価額
→土地を自由に使える場合の評価額(路線価ベース)。 - 借地権割合
→国税庁の路線価図で示される割合(例:60%、70%など)。 - 借家権割合
→借家人(賃貸借契約の入居者)が持つ権利の評価額割合。現在、原則として 30% に固定されています。 - 賃貸割合
貸家がどの程度賃貸されているかの割合で、満室の場合は100%、一部空室の場合は、賃貸部分の割合(例:80%賃貸中なら0.8)になります。
ケース例
- 土地の自用地評価額:1億円
- 借地権割合:70%
- 借家権割合:30%(固定)
- 賃貸割合:80%(一部空室あり)
- 減額割合を求める
借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 = 70% × 30% × 80% = 16.8% - 貸家建付地の評価額
自用地評価額 × (1 – 減額割合)
= 1億円 × (1 – 16.8%)
= 1億円 × 83.2% = 8,320万円
小規模宅地の場合
相続税の課税において特別に評価される小さな宅地のことです。相続税の軽減措置の一つで、被相続人が居住していた宅地や、事業に使用していた宅地などが対象となります。
具体的には、以下のような特徴があります:
- 居住用宅地の場合
- 相続人が被相続人の居住していた家屋を相続し、自己の居住用として使用する
- 面積が240平方メートルまでの部分
- 課税価格が80%減額される
- 事業用宅地の場合
- 被相続人が事業に使用していた宅地を相続した場合
- 面積や業種によって、課税価格が最大80%減額される
- 中小企業オーナーや自営業者に特に有利な制度
被相続人の自宅や事業用の土地を相続する際、一定条件を満たせば相続税評価額を最大80%減額できます。これにより、相続税の負担が大幅に軽減されます。
計算式は下記の通りです。
適用後の宅地評価額 = 対象宅地の評価額 × (1 – 減額割合)
ケース例
- 土地評価額:1億円
- 面積:300㎡
- 減額割合:80%(特定居住用宅地に該当)
1億円 × (1 – 80%) = 2,000万円
特例を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 被相続人が生前に住んでいた宅地であること
- 相続人が配偶者または同居していた親族であること
- 同居していない親族の場合、相続後も住み続ける必要があります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。上記の事例について簡単にまとめましたので、情報の整理にお役立てください。
土地の種類 | 評価方法 | 補足事項 |
借地権がある土地 | 自用地評価額 × 借地権割合 | 借地権割合は地域ごとに設定される。 |
貸家建付地 | 自用地評価額 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合) | 借家権割合は全国一律で30%。 |
小規模宅地等の特例 | 評価額 × 50%(または80%) | 一定の要件を満たした場合に適用。居住用、事業用などで減額割合が異なる。 |