今回は養子縁組制度と相続税の関係についてみていきたいと思います。
目次
Toggle〇養子縁組とは
そもそも養子縁組とは何でしょうか?養子縁組とは、血縁関係のない人との間に、法律上の親子関係を作る制度です。実の親子と同じような法的な権利と義務が発生する、とても重要な法律行為です。養子縁組をすることにより、法律上の親子関係が成立し、相続権・扶養義務が発生し、親権が移転します。
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類に分けられます。
・普通養子縁組
実の親との法的なつながりは残ったまま、養親との新しい親子関係が追加される形となります。
・特別養子縁組
実の親との法的な関係が切れる、戸籍上も実の子と同じような記載となります。
養子縁組の簡単な流れは下記のようになります。
1.事前相談
・家庭裁判所への相談(必要に応じて)
2.書類作成
養子縁組届の作成
必要書類の収集
3.申立て/届出
普通養子縁組:市区町村役場に届出
特別養子縁組:家庭裁判所に申立て
4.審査/審判
普通養子縁組:即日受理
特別養子縁組:家庭裁判所での審判
〇養子縁組と相続税について
養子縁組制度を利用するパターンとして、基本的に法定相続人とならない再婚した妻の連れ子や孫に財産を残してあげたいという要望により、養子縁組を選択するケースがあります。仮に孫を養子縁組した場合、実子と同様に相続人となり、相続順位と法定相続分も実施と同様になります。
例えば、妻一人、子供2人がおり、孫を1人養子縁組した場合は、母の法定相続割合は1/2、子供の相続分はもともと1/4だったのが6/1になります。
ちなみに、普通養子縁組でも特別養子縁組でも変わりはありません。
〇養子縁組を選択するメリット
・基礎控除額が増える
相続税の基本的な計算の仕組みでは、法定相続人の数が多いほど基礎控除額が増え、結果として相続税の負担を抑えることができます。ただし、節税目的だけの養子縁組は認められないことに注意が必要です。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)となります。
なお、養子の数の制限実子がいる場合は実子の数までの養子が認められます(上限1人)実子がいない場合は、養子は2人まで認められます。
従って、1人を養子にした場合は600万円、2人を養子にした場合は1,200万円の税額控除が増加します。
・生命保険金の非課税枠が増える
死亡保険金については、非課税限度額を超えた場合は課税対象になりますが、法定相続人の数だけ控え時限度額が増えます。
500万円 × 法定相続人の数 = 死亡保険金の非課税限度額
〇養子縁組を使う際の注意点(デメリット)
・税務調査などの可能性
まず、最も気を付けていただきたいのは養子縁組の時期が相続開始直前の場合など、明らかな租税回避目的と判断された場合、否認される可能性があります。
・相続税が2割加算になる
2割加算とは、相続税の計算において、相続人が配偶者・血族(実子など)以外の場合に、その相続人の相続税額に20%を上乗せする制度です。
養子縁組の場合も対象になります。
〇終わりに
このように、養子縁組には相続税上のメリットがありますが、それだけを目的とせず、真摯な親子関係の構築を前提に検討することが重要です。具体的な対策については、税理士等の専門家に相談することをお勧めします!